失業手当

失業保険を「会社都合にしてもらう」はできる?正しくは”実態どおりに認定してもらう”手続きの話【社労士監修】

「会社都合の方が失業保険が手厚いらしい。会社都合にしてもらう方法はないの?」——検索でよく見かける疑問ですが、最初に大事なことを言います。離職理由は会社と交渉して「してもらう」ものではなく、退職に至った事実にもとづいてハローワークが判定するものです。事実と異なる申告は不正受給の問題になります。一方で、実態は会社都合なのに自己都合として処理されているなら、正しく認定してもらう手続きがあります。この記事はその「正しいルート」の解説です。

会社都合(特定受給資格者)と自己都合の違い

会社都合等(特定受給資格者)自己都合(一般)
給付制限なし(待期7日のみ)原則1ヶ月
受給条件離職前1年間に6ヶ月以上離職前2年間に12ヶ月以上
給付日数90〜330日(年齢×勤続で手厚い)90〜150日
国保の保険料軽減対象になり得る原則対象外
目次

実は「会社都合相当」と判定され得る事実の例

自分では「自己都合で辞めた」と思っていても、次のような事実があれば、特定受給資格者・特定理由離職者と判定される可能性があります。

  • 退職勧奨を受けた(「辞めてくれないか」と言われて応じた退職は、形式が自主退職でも退職勧奨です)
  • 賃金の大幅な引き下げ、賃金の遅配・未払いがあった
  • 時間外労働が著しく長い状態が続いていた
  • 採用時に示された労働条件と実際が著しく異なっていた
  • ハラスメント(いじめ・嫌がらせ・セクハラ等)について会社が適切な対応をしなかった
  • 契約更新を希望したのに更新されなかった(雇止め)

つまり正しい問いは「会社都合にしてもらうには?」ではなく、「私の退職の実態は、どの区分の事実に当てはまるか?」です。当てはまる事実があるなら、それを証拠とともにハローワークに伝えるのが正規ルート。事実があるのに泣き寝入りする必要も、事実がないのに偽る余地もありません。

自己都合と処理されていた場合の「異議申し立て」

離職票を確認離職理由欄をチェック
異議を申し出るハローワーク手続き時に
証拠を提出メール・給与明細・記録など
ハローワークが判定会社にも事実確認のうえ決定

▲ 判定権者は会社ではなくハローワーク。事実と証拠を第三者に示すのが正規ルートです

  1. 離職票が届いたら離職理由欄を確認(会社の記載と、あなたが選ぶ欄の両方があります)
  2. 実態と異なる場合、ハローワークの手続き時に「離職理由に異議あり」と申し出る(離職票-2の本人判断欄で異議を示せます)
  3. 証拠を提出する ― 退職勧奨のやり取り(メール・録音・メモ)、給与明細(残業時間・賃金低下)、タイムカード、求人票と実際の条件の差、ハラスメントの記録、受診記録など
  4. ハローワークが会社側にも事実確認を行い、最終判定します

会社が「会社都合にしたがらない」背景には、助成金の受給要件に影響するなど会社側の事情があることが多く、交渉が難航しがちです。しかし判定権者は会社ではなくハローワークです。会社との交渉に勝つ必要はなく、事実と証拠を第三者(ハローワーク)に示せばよい——ここを押さえると、精神的にもぐっと楽になります。なお、事実に反する申告(実際は自己都合なのに会社都合と偽る、会社と口裏を合わせる等)は不正受給として返還・納付命令の対象になり得ます。絶対にやめてください。

よくある質問

「会社都合にすると転職で不利」と聞いて迷っています。

離職理由の区分は雇用保険上の扱いであり、履歴書に「会社都合退職」と書く義務はありません(倒産・解雇などは面接で問われれば事実を述べるのが基本です)。給付上の正しい区分を求めることと、転職活動は切り分けて考えて大丈夫です。

退職勧奨に応じるとき、何を残しておくべきですか?

勧奨の面談日時・発言内容のメモ、可能ならメールでの確認(「先日ご提案いただいた退職の件」等の返信で記録化)、退職合意書の文面。「会社都合(退職勧奨)による退職」であることが書面に残ると、後の手続きが非常にスムーズです。

体調を崩して辞めた場合はどうなりますか?

正当な理由のある自己都合として「特定理由離職者」(給付制限なし・条件緩和)と判定される可能性があります。在職中の受診記録・診断書が判断材料です。会社都合とはまた別の、あなたを守る区分があります。

証拠の集め方:事由別「効く資料」リスト

  • 退職勧奨 ― 面談の日時・出席者・発言のメモ(直後に書く)、可能なら録音、「先日の退職のご提案について」等の返信メール、退職合意書の文面
  • 長時間労働 ― タイムカード・勤怠システムの記録、PCのログイン履歴、業務メールの送信時刻、シフト表。離職前の一定期間の時間外労働の水準が判定の目安になります
  • 賃金の不払い・大幅低下 ― 雇用契約書と給与明細の対比、振込記録、減額を通知された書面やメール
  • ハラスメント ― 言動の日時・内容の時系列メモ、メッセージのスクリーンショット、社内相談窓口や上司への相談記録(相談した事実と会社の対応が重要な判定要素です)
  • 労働条件の相違 ― 求人票(スクリーンショット)、労働条件通知書、実際の勤務実態が分かる記録

共通の原則は「在職中・アクセスできるうちに確保する」こと。退職後は社内システムに入れなくなります。そして原本が無理でも、日付入りの自分のメモには一定の価値があります。完璧な証拠が揃わないからと諦めず、あるものを持って窓口へ。

判定までの流れと心構え

異議を申し出た後の流れは、①ハローワークが本人から事情聴取(提出資料の確認)、②会社側へ照会・事実確認、③双方の主張と資料を突き合わせて判定、となります。期間はケースにより数週間かかることもあり、その間、受給手続きは仮の区分で進む場合があります。心構えとしては、感情の主張より事実の提示に徹すること。「ひどい会社だった」ではなく「◯月◯日にこの発言があった、この記録がある」。窓口の職員は判定のプロなので、時系列の整った事実さえ渡せば、あとは制度が仕事をします。また、判定結果に不服がある場合は、雇用保険審査官への審査請求という次の手続きも用意されています。一度の判定がすべての終わりではありません。

ケーススタディ:「自己都合」から区分が変わった42歳・事務職
月80時間前後の残業が半年続き、体調悪化で退職。会社は「一身上の都合」で処理したが、本人は離職票の本人判断欄で異議を選択し、勤怠データ1年分と受診記録を提出。会社側への照会を経て、約3週間後に特定受給資格者と判定。給付制限なし・給付日数240日(勤続12年)となり、当初想定(自己都合120日)との差は日額換算で約80万円に。提出した資料は、在職中に自分のメールへ転送しておいた勤怠データでした。

会社と揉めたくありません。異議を出したら会社に伝わりますか?

事実確認の過程で会社への照会が行われるため、異議の存在自体は会社に知られ得ます。ただしこれは制度上の正規手続きであり、これを理由とする嫌がらせは新たな問題行為です。すでに退職している(する)以上、失うものより取り戻すものの方が大きいケースがほとんどです。

証拠がほぼありません。もう無理でしょうか?

諦める前に、記憶の時系列メモを作り、同僚の証言の可能性、社内システムのデータ(在職中なら今すぐ確保)、医療機関の受診記録を洗い出してください。また、判定はあなたの資料だけでなく会社側への照会も踏まえて行われます。ゼロ回答と決めつけず、窓口に相談を。

これから退職する人へ:辞める前の72時間でできること

この記事を退職前に読んでいるあなたは、まだ最強のカードを持っています。それは「在職中である」こと。退職までの数日でも、①勤怠データ・給与明細・雇用契約書を個人の環境に確保する(私的情報の持ち出しではなく、自分の労働条件に関する記録の保全です)、②退職勧奨や問題発言があれば、その日のうちに時系列メモを書く、③体調が絡むなら受診しておく(初診日が全ての起点になります)、④退職届の文言を実態に合わせる(勧奨なら「退職勧奨に伴い」)——ここまで整えられます。区分の判定は退職後に行われますが、その材料の9割は在職中にしか作れません。「辞めてから考える」を「辞める前に72時間だけ整える」に変える。それだけで、受け取れる給付の景色が変わります。

在職中にハローワークへ事前相談できますか?

できます。離職前でも、想定される離職理由の区分や必要な資料について窓口で相談可能です。匿名での一般的な相談から始めても構いません。退職前の相談は、判定を有利にする「予習」として非常に有効です。

特定理由離職者と特定受給資格者、どちらを狙うべきですか?

「狙う」ものではなく事実で決まりますが、給付日数の手厚さは特定受給資格者の方が上です(特定理由離職者は給付制限なし・条件緩和が中心で、日数は一部を除き自己都合と同じ)。複数の事由がある場合は全て伝え、判定はハローワークに委ねてください。

正しい問いに変えた瞬間から、やるべきことは「交渉」から「記録」に変わります。事実を集め、正規のルートで示す。給付は、そうやって取り戻すものです。

判定にかかる期間中、生活費はどうすれば?

仮の区分で手続きが進む場合は、その区分での支給が先行することがあります。判定で区分が変われば差額等は調整されるため、まず手続き自体を止めないことが大切です。

判定にはどのくらい時間がかかりますか?

資料が揃っていれば数日で結論が出ることもあれば、会社側への照会に時間を要して数週間かかることもあります。時間がかかっても受給資格の手続き自体は並行して進むため、判定待ちを理由に手続きを遅らせる必要はありません。

自己都合のまま一般の離職者
90〜150日
実態どおり認定特定受給資格者の場合
90〜330日+給付制限なし

▲ 区分が変わると日数の上限と給付制限の扱いが変わります。だからこそ事実で申し立てる価値があります

まとめ:偽らない、諦めない、事実で申し立てる

離職理由は交渉の産物ではなく事実の認定です。①実態に当てはまる事由がないか確認、②あるなら証拠を揃えて離職票の異議申し立て、③判定はハローワークに委ねる——このルートなら、誰にも後ろめたくない形で正当な給付にたどり着けます。あなたの退職の経緯がどの区分に当たり得るか、整理のお手伝いをLINEの無料相談で承ります。

※本記事は一般的な制度解説であり、受給を保証するものではありません。離職理由の判定はハローワークが行います。虚偽の申告は不正受給となります。最新情報は公式情報をご確認ください。

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