退職給付金の全体像 ― 柱になるのは2つの制度
失業手当(雇用保険)
- 再就職までの生活を支える給付
- 賃金の50〜80%を90〜330日分
- 離職理由の区分で日数・開始時期が変動
傷病手当金(健康保険)
- 療養中の生活を支える給付
- 給与の約3分の2を通算最長1年6ヶ月
- 要件を満たせば退職後も継続受給の可能性
▲ どちらに該当するかは「いま働ける状態か」で分かれます。同時には受け取れませんが、順番に両方を受け取れるケースがあります
2つの制度は目的が正反対です。失業手当は「働ける人が仕事を探す間」の給付、傷病手当金は「働けない人が療養する間」の給付。だから同時受給はできず、状態に応じてどちらか一方を受け取ります。この性質を理解すると、後述する「順番の設計」の重要性が見えてきます。
失業手当(雇用保険の基本手当)を詳しく
受給の3条件
- 雇用保険の加入期間 ― 離職前2年間に通算12ヶ月以上(倒産・解雇等の特定受給資格者、正当な理由のある自己都合等の特定理由離職者は、離職前1年間に通算6ヶ月以上)。転職前の期間も、離職から1年以内の再加入で前職の給付を受けていなければ通算できます
- 働ける状態であること ― 就労の意思と能力があり、求職活動を行えること
- ハローワークでの手続き ― 離職票を持参して求職の申込みを行うこと
いくらもらえる?(基本手当日額)
(60〜64歳は45〜80%)
▲ 例:月収24万円なら日額約5,300〜5,800円、月あたり約16〜17万円が目安(概算)
何日分もらえる?(所定給付日数)
| 離職理由 | 被保険者期間 | 給付日数 |
|---|---|---|
| 自己都合(一般) ※全年齢共通 | 10年未満 | 90日 |
| 10年以上20年未満 | 120日 | |
| 20年以上 | 150日 | |
| 会社都合等 (特定受給資格者) | 年齢×期間で細分 | 90〜330日 (45歳以上60歳未満・20年以上で最長330日) |
いつからもらえる?
全員共通の待期7日間のあと、会社都合等なら受給開始。自己都合の場合はさらに給付制限・原則1ヶ月(2025年4月以降の離職。5年以内に3回以上の自己都合離職がある場合は3ヶ月)を経て開始します。手続きから初回振込までは、会社都合等で約1ヶ月、自己都合で約2ヶ月が目安です。なお、受け取れる期間(受給期間)は離職日の翌日から原則1年。手続きが遅れるほど受け取れる日数が目減りするリスクがあるため、離職票が届いたら早めの手続きが鉄則です。病気などで働けない場合は、受給期間を最長4年まで延長できる制度があります(後述)。
傷病手当金(健康保険)を詳しく
受給の4条件
- 業務外の病気・ケガによる療養であること(業務上・通勤中は労災の対象)。うつ病・適応障害などの精神疾患も対象になり得ます
- 労務不能であること ― 医師により、仕事に就けない状態と判断されること
- 連続する3日間の待期が完成していること ― 土日・祝日・有給休暇でも待期にカウントされます。支給対象は4日目以降
- 休んだ期間に給与の支払いがないこと(給与が一部支払われた場合は差額支給の扱い)
いくら・いつまでもらえる?
▲ 支給期間は支給開始日から「通算」1年6ヶ月。途中で復職して働いた期間はカウントされません
退職後も受け取れる「継続給付」の要件
退職後も傷病手当金を受け取り続けるには、①退職日までに継続して1年以上健康保険の被保険者であること(空白なく続いていれば転職をまたいだ通算可)、②退職時点で傷病手当金を受けているか受けられる状態であること、が必要です。とくに重要なのが、退職後の継続給付を受けるためには、退職日の時点でも引き続き労務不能の状態であることが要件だという点。退職日に出勤(労務)した場合は労務可能な状態になったものと扱われ、一度労務可能な状態になると、退職後の継続給付は受給できません。退職日の設計が結果を左右する、最大の理由がここにあります。
そのほか押さえておきたいポイントとして、請求権の時効は労務不能だった日ごとに2年(在職中の未請求分をさかのぼって請求できる可能性があります)、退職後に国民健康保険や任意継続へ切り替えても支払元は在職中に加入していた保険者のままで継続給付に影響しない、パート・アルバイトでも勤務先の健康保険に加入していれば正社員と同じ計算式で対象になる、などがあります。
2つをつなぐ「順番」の設計
(給与の約2/3・通算最長1年6ヶ月)
(最長4年)
(90〜330日分)
▲ 心身の不調で退職する方の基本形。療養期間+求職期間をあわせて2年以上、生活を支えられる可能性があります
逆に、順番や退職日の設計を誤ると——退職日に出勤して継続給付の要件を外す、受給期間延長を知らずに失業手当の1年を経過させる、など——本来受け取れたはずの給付を受け取れないことがあります。「知っているかどうか」で結果が大きく変わるのが、この制度の特徴です。
あわせて知っておきたい関連制度
| 制度 | 概要 |
|---|---|
| 受給期間延長 | 病気・ケガ・妊娠出産・育児等で30日以上働けない場合、失業手当の受給期間(原則1年)を最長4年まで延長。郵送・代理申請も可能 |
| 再就職手当 | 給付日数を3分の1以上残して安定した職業に就くと、残日数の60%(3分の2以上残しは70%)を一時金で支給 |
| 教育訓練給付・公共職業訓練 | 学び直しの受講費用の一部支給や、訓練期間中の給付延長(訓練延長給付)の仕組み |
| 障害年金 | 初診日から1年6ヶ月(障害認定日)以降、状態に応じて申請可能。傷病手当金の終了後の受け皿になり得ます |
| 求職者支援制度 | 雇用保険を受給できない方向けの無料職業訓練+条件を満たせば月10万円の給付金 |
税金・扶養・転職への影響
- 非課税 ― 失業手当・傷病手当金はどちらも所得税・住民税がかかりません。ただし退職までの給与への課税は別なので、年内に再就職しない場合は確定申告で還付を受けられることが多くあります
- 扶養との関係 ― 受給中の日額が約3,612円以上だと、健康保険の被扶養者になれない扱いが一般的です(最終判断は保険者)。受給の前後で扶養の出入りを設計するケースがあります
- 転職への影響 ― 受給の事実が転職先に通知されることはありません。離職理由の区分も履歴書への記載義務はありません
- 社会保険料 ― 受給中も、加入している健康保険・国民年金の保険料は発生します。国民健康保険の軽減(非自発的離職)や国民年金の免除など、負担を下げる制度の併用を検討しましょう
よくある誤解と質問
「自己都合退職だからもらえない」→ 自己都合でも条件を満たせば受給できます(2025年4月以降、給付制限は原則1ヶ月に短縮)。
「うつ・適応障害は対象外」→ 精神疾患も医師が労務不能と判断すれば傷病手当金の対象になり得ます。
「パート・短期勤務は関係ない」→ 加入状況と通算ルールしだいで対象になり得ます。
「手続きが難しそう」→ 書類と順番の設計が9割です。そこを支えるのが私たちのサポートです。
誰でももらえるのですか?
いいえ。雇用保険・健康保険の加入期間や離職理由、体調の状態など、制度ごとの要件を満たす必要があります。だからこそ、退職前の確認と設計が重要です。ご自身が対象になり得るかは無料診断でご確認いただけます。
怪しい制度ではないのですか?
失業手当(雇用保険の基本手当)も傷病手当金も、雇用保険法・健康保険法に定められた公的制度です。当サービスは虚偽申請等の不正受給には一切関与せず、要件を満たす方の正当な申請だけをサポートしています。
すでに退職していても間に合いますか?
失業手当の受給期間(原則1年)や傷病手当金の時効(2年)の範囲内であれば、今からでも申請できる可能性があります。働けない状態が続いていた方は受給期間延長の申請も含め、まず状況をお聞かせください。
金額や期間は誰が決めるのですか?
失業手当はハローワーク、傷病手当金は加入先の保険者(協会けんぽ・健康保険組合)が、法令にもとづいて決定します。当ページの金額・期間はいずれも概算の目安です。
公的機関の情報源・関連コラム
制度の一次情報は、次の公的機関で確認できます。
- ハローワークインターネットサービス ― 失業手当(基本手当)の手続き・様式・Q&A
- 厚生労働省 ― 雇用保険制度・法改正の情報
- 全国健康保険協会(協会けんぽ) ― 傷病手当金の要件・申請書様式
- 日本年金機構 ― 国民年金・障害年金
より具体的なケース別の解説は、お役立ちコラムをご覧ください(順次公開中)。
- 【2026年版】自己都合退職でも失業手当はもらえる?受給条件・給付制限・申請の流れを社労士監修で解説
- 傷病手当金とは?もらえる条件・金額・期間を分かりやすく解説|退職後も受け取れるケースも【社労士監修】
- うつで退職を考えている方へ|傷病手当金と失業手当は「どっちが先」?順番を間違えると損をする理由【社労士監修】
- 失業手当はいつからもらえる?申請から初回振込までのスケジュールを日数で解説【2026年版】
- 雇用保険12ヶ月未満だと失業保険はもらえない?6ヶ月で受給できる例外と「通算ルール」を解説【社労士監修】
- 傷病手当金、退職日に出勤してしまったらどうなる?継続給付の要件と残された選択肢【社労士監修】
※本ページは一般的な制度解説であり、受給を保証するものではありません。支給の可否・金額・期間は各保険者・ハローワークの決定によります。上限額等は改定されるため、最新情報は各公的機関の情報をご確認ください。当サービスは、社会保険労務士の監修のもと作成しています。