傷病手当金

傷病手当金とは?もらえる条件・金額・期間を分かりやすく解説|退職後も受け取れるケースも【社労士監修】

「体調を崩して働けないのに、収入が止まるのが怖くて休めない」――その悩みに対する、健康保険からの答えが傷病手当金です。会社員・パートなどで健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)に加入している方が、病気やケガで働けない間の生活を支えるための公的な給付で、条件を満たせば退職した後も受け取り続けられる制度です。

標準報酬月額支給開始以前12ヶ月の平均
÷
301日あたりに換算
×
2/3支給割合
=
支給日額例:月30万円→約6,667円

▲ 傷病手当金の計算式。給与のおよそ3分の2が目安です

結論:4つの条件を満たせば、給与の約3分の2が最長1年6ヶ月

項目内容
対象者健康保険(協会けんぽ・組合健保)の被保険者 ※国民健康保険は対象外
金額の目安支給開始日以前12ヶ月の標準報酬月額の平均 ÷ 30 × 3分の2(日額)
期間支給開始日から通算で最長1年6ヶ月
退職後条件を満たせば継続して受給可能(後述)
目次

支給される4つの条件

  1. 業務外の病気やケガで療養中であること。仕事や通勤が原因の場合は労災保険の対象。うつ病・適応障害などの精神疾患も、業務外の療養として対象になります(医師の診断・証明が前提)
  2. 働くことができない状態(労務不能)であること。自己判断ではなく、医師の意見や業務内容をもとに判断されます。つらいと感じたら早めに受診を
  3. 連続する3日間の待期を含み、4日以上仕事に就けなかったこと。待期は「連続した3日間」で完成(土日・祝日・有給休暇でもOK)。支給は4日目以降の分
  4. 休んだ期間について給与の支払いがないこと。給与が傷病手当金より少ない場合は差額が支給されます

いくらもらえる?計算方法

日額は「支給開始日以前の継続した12ヶ月間の標準報酬月額の平均 ÷ 30 × 2/3」です。

例:標準報酬月額の平均が30万円の場合
30万円 ÷ 30 × 2/3 = 日額 約6,667円(月あたり約20万円)

加入期間が12ヶ月に満たない場合は、加入期間中の平均と加入する保険全体の平均のいずれか低い方を使うルールがあります。賞与は原則、計算に含まれません。

いつまでもらえる?「通算1年6ヶ月」の意味

支給期間は、支給開始日から通算して1年6ヶ月です。2022年の改正で「通算化」され、途中で体調が回復して復職した期間は1年6ヶ月のカウントに含まれなくなりました。つまり「働けた期間は温存され、再び働けなくなったら残りを使える」仕組みです。療養と復職を繰り返しやすいメンタル疾患の方にとって、実態に合った改正といえます。

退職後も受け取り続けるための条件(最重要ポイント)

在職中に受給を始めた傷病手当金は、次の2つの条件を満たせば退職後も継続して受け取れます(資格喪失後の継続給付)。

  1. 退職日までに、継続して1年以上健康保険の被保険者であったこと(転職していても、空白なく健康保険が続いていれば通算されます)
  2. 退職日の時点で、傷病手当金を受けているか、受けられる状態であること(待期3日間が完成しており、労務不能であること)

特に重要な要件がひとつあります。退職後の継続給付を受けるためには、退職日の時点でも引き続き労務不能の状態であることが必要です。退職日に出勤(労務)した場合は労務可能な状態になったものと扱われ、一度労務可能な状態になると、退職後の継続給付は受給できません。挨拶や引き継ぎのための短時間の出勤も労務にあたり得るため、退職日の取り扱いについて判断に迷う場合は、事前に加入先の保険者や専門家に確認してください。

また、退職後にどの健康保険に切り替えても(任意継続・国民健康保険・家族の扶養)、継続給付そのものは元の保険者から支払われます。切り替え先の選択で継続給付の可否は変わりませんが、扶養には収入要件があり傷病手当金も収入に数えられる点には注意が必要です。

ケーススタディ:月収28万円・入社3年目でうつ病により休職する場合

標準報酬月額を28万円とすると、日額は 28万円 ÷ 30 × 2/3 ≒ 約6,222円。月あたりでは約18万〜19万円が支給の目安です。仮に6ヶ月休職したのち退職し、退職日時点でも労務不能の状態が継続している場合、継続給付の条件を満たしていれば、支給開始から通算1年6ヶ月まで受給を続けられる可能性があります。その後、働ける状態まで回復すれば、受給期間延長を申請しておいた失業手当に切り替える――これが療養退職の王道ルートです。※金額はあくまで簡易試算で、実際は加入する保険者の決定によります。

支給されない・止まる主なケース

  • 仕事や通勤が原因の傷病 ― 労災保険の対象であり、傷病手当金の対象外です(両方から二重には受け取れません)
  • 国民健康保険の加入者 ― 自営業・フリーランスの方が加入する国民健康保険には、原則として傷病手当金の制度がありません
  • 退職後に初めて発症した傷病 ― 退職後の継続給付は「在職中から続く労務不能」が前提。退職してから新たに生じた傷病は対象になりません
  • 給与が支払われている期間 ― 有給休暇の取得中など、給与が出ている期間は支給されません(少ない場合は差額支給)
  • 就労を始めたとき ― 本格的な就労を始めると「労務不能」ではなくなり、支給は終了。回復後は失業手当への切り替えを検討します

また、障害厚生年金や出産手当金など、他の給付を受けられる場合には支給額が調整(減額・不支給)される仕組みがあります。複数の制度にまたがりそうな方は、申請前に必ず確認しましょう。

なぜ「在職中に」動き始めるべきなのか

傷病手当金でいちばん多い後悔は、「退職してから調べ始めた」です。理由は3つあります。第一に、待期3日間の完成と労務不能の証明は在職中のほうが圧倒的にスムーズです。第二に、退職後の継続給付には「継続1年以上の加入」と「退職日時点で受給できる状態」という条件があり、これは退職日を迎えてからでは整えられません。第三に、「退職日時点でも労務不能の状態が続いていること」という継続給付の要件は、事前に知らなければ気づけないものだからです。つらくなってきたら、退職を決める前に、まず受診と情報収集。この順番だけは覚えておいてください。

申請の流れ

  1. 受診 ― まず医療機関へ。労務不能の判断・証明は医師にしかできません
  2. 会社へ連絡・休職 ― 欠勤(または休職)し、給与の支払い状況を確定させます
  3. 申請書の作成 ― 「本人記入欄」「事業主証明欄」「医師の意見書」の3パートで構成されます
  4. 保険者へ提出 ― 協会けんぽまたは健康保険組合へ。一般的に1ヶ月ごとに、経過分をさかのぼって申請します
  5. 審査・支給 ― 不備がなければ、申請から数週間程度で指定口座に振り込まれます

つまずきやすいのは、待期の数え方、退職日をまたぐ期間の書き方、医師の意見書の期間とのズレなどです。特に退職を予定している方は、「どの期間を・どの順で」申請するかの設計を誤ると継続給付に影響するため、初回だけでも専門家に相談しながら進めるのが安心です。

よくある質問

パート・アルバイトでも対象になりますか?

勤務先の健康保険(協会けんぽ・組合健保)に加入していれば対象です。ご自身の保険証(資格情報)で確認できます。

有給休暇と傷病手当金、どちらを使うべき?

有給取得中は給与が出るため傷病手当金は支給されません(待期の3日間には使えます)。一般には、有給を待期に充ててから欠勤に切り替える形が多いですが、残日数や退職予定によって最適解が変わります。

失業手当と同時にもらえますか?

もらえません。傷病手当金は「働けない人」、失業手当は「働ける人」の制度で、順番に受け取る形になります。詳しくは関連記事「傷病手当金と失業手当はどっちが先?」をご覧ください。

申請でつまずきやすい実務ポイント

制度を理解していても、書類の実務でつまずく方は多くいます。代表的なのが「期間のズレ」です。本人が請求する期間、事業主が証明する勤怠の期間、医師が労務不能と認めた期間——この3つが一致していないと、差し戻しや支給の遅れにつながります。特に医師の意見書は「診察日までの期間」しか書けないのが原則のため、受診の間隔が空くと証明できない空白期間が生まれます。月1回以上の受診を切らさないことが、そのまま給付を切らさないことにつながるのです。

もうひとつが初回申請の添付書類。初回は賃金台帳や出勤簿の写しを求められることがあり、会社の協力が必要です。退職を控えている方は、在職中に初回申請まで済ませておくと、退職後のやり取りが格段に楽になります。申請から振込までは審査を含めて数週間〜1ヶ月程度かかることが多いため、生活費は1〜2ヶ月分の余裕を見込んでおきましょう。

会社が事業主証明を書いてくれません。

事業主証明は申請に必要な手続きであり、正当な理由なく拒否することは想定されていません。会社が応じない場合は、加入先の保険者(協会けんぽ・健康保険組合)に事情を伝えて相談してください。保険者から会社へ確認が入ることで解決するケースが多くあります。

うつ病であることを会社に知られたくありません。

傷病手当金の申請書で会社が記入するのは勤怠と給与の証明欄であり、傷病名の詳細を会社に開示する義務はありません(書式上、会社に病名が伝わり得る部分の扱いは保険者・書式により異なるため、気になる方は保険者に確認を)。なお、休職する場合は診断書の提出で一定の情報は伝わります。

待期 連続3日有給・公休でも完成
4日目から支給対象労務不能+給与なしの日
通算 最長1年6ヶ月復職期間はカウントされない

▲ 支給のタイムライン。「連続3日」の待期が完成してからの4日目以降が対象です

まとめ:「休む」を支える制度を、正しく使う

傷病手当金は、保険料を払ってきた方が当然に使ってよい公的制度です。ただし、待期の完成・労務不能の証明・退職日時点の状態の取り扱いなど、知らないと取り返しのつかないポイントがいくつもあります。体調がつらい今だからこそ、手続きはひとりで抱え込まず、まずはあなたが対象になり得るかをLINEの無料診断(約1分)で確認してみてください。

※本記事は一般的な制度解説であり、受給を保証するものではありません。制度は改正されることがあります。最新情報は、ご加入の健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)の公式情報をご確認ください。つらい気持ちが続くときは、医療機関や身近な相談窓口に早めに相談してください。

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