「自分から会社を辞めたら、失業手当はもらえない」――そう思い込んで、退職後の生活費を貯金だけでやりくりしようとしていませんか。実はこれは、退職を考える方が最も多く抱えている誤解のひとつです。結論からお伝えすると、自己都合退職でも、条件を満たせば失業手当(雇用保険の基本手当)は受け取れます。しかも2025年4月の法改正で、自己都合退職の場合の「給付制限期間」は従来の2ヶ月から原則1ヶ月に短縮され、以前よりも早く受給を開始できるようになりました。
この記事でわかること
- 自己都合退職で失業手当を受け取るための条件
- 受給開始までのスケジュールと、もらえる金額・期間の目安
- 申請の流れと、退職前に知っておきたい注意点
▲ 自己都合退職の受給までの流れ。給付制限は2025年4月以降、原則1ヶ月に短縮されています
結論:条件は「雇用保険12ヶ月以上」、開始は「待期7日+給付制限 原則1ヶ月」
まず全体像を表で押さえましょう。
| 項目 | 自己都合退職の場合 |
|---|---|
| 受給条件 | 離職日以前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算12ヶ月以上 |
| 待期期間 | 7日間(全員共通) |
| 給付制限 | 原則1ヶ月(2025年4月1日以降の離職。※例外あり、後述) |
| 給付日数 | 90日〜150日(雇用保険の加入年数による) |
| 金額の目安 | 離職前6ヶ月の賃金をもとに算出した賃金日額の約50〜80% |
つまり「辞め方が自己都合かどうか」で受給できるか否かが決まるのではなく、雇用保険にどれだけ加入していたかが受給の分かれ目です。ここから、それぞれを詳しく見ていきます。
受給条件:離職前2年間に「被保険者期間12ヶ月以上」
自己都合退職の場合、失業手当の受給には、離職日以前の2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算で12ヶ月以上あることが必要です。「通算」なので、転職を挟んでいても、前職と現職の加入期間を合算できるケースがあります(前職の離職時に失業手当を受給していないこと等の条件があります)。
ここで重要な救済ルールがあります。体調不良や家族の介護など「正当な理由のある自己都合退職」と認められた場合は特定理由離職者となり、条件が「離職前1年間に被保険者期間6ヶ月以上」に緩和されます。倒産・解雇など会社側の事情による離職(特定受給資格者)も同様に6ヶ月で足ります。「勤続1年未満だから無理」と諦める前に、自分がどの区分に当たるのかを確認する価値は十分にあります。
なお、失業手当は「働く意思と能力があり、求職活動をしているのに職に就けない状態」であることが前提です。病気やケガですぐに働けない場合は失業手当ではなく傷病手当金などの対象になる可能性があり、その場合は失業手当の受給期間延長申請(最長4年まで)をしておくことで、回復後に失業手当を受け取る道を残せます。
いつからもらえる?待期7日+給付制限「原則1ヶ月」のスケジュール
受給開始までの流れは次のとおりです。
- 退職 → 会社から離職票が届く(通常10日〜2週間程度)
- ハローワークで求職申込み・受給資格の決定
- 待期期間7日間(離職理由を問わず全員)
- 自己都合の場合は給付制限期間・原則1ヶ月
- 失業認定(原則4週間ごと)を経て、指定口座に振込
2025年4月1日以降に自己都合で離職した場合、給付制限は従来の2ヶ月から原則1ヶ月に短縮されました。ただし例外があり、過去5年以内に自己都合離職による受給が3回以上ある場合などは給付制限が3ヶ月となります。また、雇用の安定・就職促進に資する教育訓練を自ら受ける場合には、給付制限が解除される制度も始まっています。ネット上には「2ヶ月」「3ヶ月」と書かれた古い記事が多く残っているため、離職日がいつかで適用が変わる点に注意してください。
いくら・どのくらいの期間もらえる?
金額は、離職前6ヶ月間の賃金合計を180で割った「賃金日額」の約50〜80%(60〜64歳は45〜80%)が「基本手当日額」となります。賃金が低かった方ほど高い率が適用される仕組みで、日額には年齢区分ごとの上限もあります。
給付日数は、自己都合(一般の離職者)の場合、雇用保険の加入期間によって次のとおりです。
| 雇用保険の加入期間 | 給付日数 |
|---|---|
| 10年未満 | 90日 |
| 10年以上20年未満 | 120日 |
| 20年以上 | 150日 |
ケーススタディ:30代・月収25万円・勤続5年の場合
賃金日額はおよそ25万円×6ヶ月÷180=約8,300円。給付率を仮に60%とすると基本手当日額は約5,000円、給付日数90日で総額の目安は約45万円です(※あくまで簡易試算であり、実際の金額は賞与の扱いや上限額等で変わります)。決して小さな金額ではなく、この期間を「焦らず次を探す時間」に充てられるかどうかは、再出発の質を大きく左右します。
「正当な理由」と認められやすい自己都合退職の例
特定理由離職者(受給条件が6ヶ月に緩和され、給付制限もかからない区分)と認められる「正当な理由のある自己都合退職」には、たとえば次のようなケースがあります。
- 体力の不足、心身の障害、疾病などにより離職した場合(医師の証明などが判断材料になります)
- 妊娠・出産・育児により離職し、受給期間延長の措置を受けた場合
- 父母の死亡・疾病等により家庭の事情が急変し、扶養や介護のために離職した場合
- 配偶者の転勤等により通勤が不可能・困難になった場合
- 事業所の移転により通勤がおおむね往復4時間以上になった場合
該当するかどうかの最終判断はハローワークが行いますが、「自己都合=一律に不利」ではないことがわかるはずです。体調不良で辞める方は、受診記録や診断書が区分判定の重要な材料になるため、退職前から記録を残しておくことを強くおすすめします。
早く再就職が決まったら「再就職手当」も
「失業手当をもらい切る前に就職したら損」と思われがちですが、そうではありません。所定給付日数を3分の1以上残して安定した職業に就いた場合、残日数に応じて基本手当の60%または70%(3分の2以上残しなら70%)がまとめて支給される再就職手当があります。つまり、早く決まっても金銭的に報われる設計になっているので、受給中も安心して就職活動を進めてください。
申請の流れと必要書類
ハローワークでの手続きに必要なものは、離職票(1・2)、マイナンバーカード等の本人確認書類、写真、本人名義の預金通帳またはキャッシュカードなどです。申請後は4週間に1度の失業認定日にハローワークへ行き、求職活動の実績(原則2回以上、初回認定は1回)を報告します。
つまずきやすいのは、①離職票がなかなか届かない(会社への催促が必要になるケース)、②離職理由の記載が実態と異なる、③求職活動実績の要件を満たせず認定されない、の3つです。特に離職理由は給付制限や給付日数に直結するため、離職票が届いたら離職理由欄を必ず確認してください。
退職前にやっておくべきことチェックリスト
- 雇用保険の加入期間を確認する(給与明細・雇用保険被保険者証。転職歴があれば通算も確認)
- 体調不良が理由なら、退職前に受診して記録を残す
- 有給休暇の残日数と消化スケジュールを確認する
- 離職票の発行を会社に依頼し、届いたら離職理由欄をチェックする
- 働ける状態でない場合は、受給期間延長申請(最長4年)を忘れない
- 住民税・国民健康保険・国民年金の切り替えなど、退職後の手続きを一覧化しておく
これらは退職「後」ではなく「前」に整えるほど選択肢が広がります。特に離職理由と体調の記録は、あとから遡ってつくることができません。
よくある質問
退職してから時間が経っていても申請できますか?
受給期間は原則「離職日の翌日から1年間」です。この期間を過ぎると、給付日数が残っていても受け取れなくなるため、退職後はできるだけ早く手続きするのが鉄則です。
アルバイトをしながらでも受給できますか?
一定の範囲内なら可能ですが、働いた日・収入は失業認定日に必ず申告が必要です。無申告は不正受給となり、返還や納付命令の対象になり得ます。
会社が離職票を出してくれません。
離職票の交付は会社の義務です。届かない場合はハローワークに相談すれば、会社への確認・催促を行ってもらえます。
受給しながら使える「上乗せ」の制度
基本手当のほかにも、受給者が使える制度があります。ひとつは教育訓練給付。厚生労働大臣指定の講座を受講すると、受講費用の一部(講座の種類に応じた割合)の支給を受けられる制度で、離職後の学び直しと相性が良い仕組みです。もうひとつは公共職業訓練。ハローワークの受講指示を受けて訓練を受ける場合、訓練期間中は所定給付日数が過ぎても基本手当の支給が延長される「訓練延長給付」の対象になることがあり、給付制限中の方は制限が解除される扱いもあります。「もらいながらスキルを付けて、より良い条件で再就職する」という設計図が、制度としてきちんと用意されているのです。
また、遠方の面接に行く場合の広域求職活動費、再就職のために転居が必要な場合の移転費など、細かな給付も存在します。使える制度を知っているかどうかで、同じ90日間の密度は大きく変わります。ハローワークの初回説明会の資料は、隅々まで目を通す価値があります。
公務員でしたが失業手当はもらえますか?
公務員は雇用保険の適用除外のため、基本手当の対象外です(代わりに退職手当の制度があります)。民間企業への転職後に離職した場合は、その期間の加入で判断されます。
自営業を始める予定でも受給できますか?
失業手当は「雇用されて働く意思」が前提のため、開業準備に専念する場合は対象外になるのが原則です。ただし、求職活動と並行しつつ、再就職手当の対象となる形で開業に移行できるケースもあります。方針が固まる前にハローワークへ相談してください。
▲ 給付制限の短縮で、自己都合退職でも受給開始までの期間は大きく縮まりました(5年内3回以上の離職は3ヶ月)
まとめ:「自己都合だから」で諦めるのはもったいない
自己都合退職でも、雇用保険に12ヶ月以上(特定理由離職者なら6ヶ月以上)加入していれば失業手当を受け取れる可能性があり、2025年の改正で受給開始も早くなりました。一方で、受給できるか・いくらもらえるか・いつから始まるかは、離職理由や加入期間、体調など個別の事情によって大きく変わります。「自分の場合はどうなのか」を退職前に把握しておくことが、損をしない一番の近道です。退職リリーフでは、あなたの状況をもとにした無料診断をLINEで受け付けています。
※本記事は一般的な制度解説であり、受給を保証するものではありません。制度は改正されることがあります。最新情報は厚生労働省・ハローワークインターネットサービスの公式情報をご確認ください。
