失業手当を検討するとき、最終的に知りたいのは「毎月いくら振り込まれるのか」ですよね。計算は2段階——①離職前の給与から「賃金日額」を出し、②年齢と賃金に応じた「給付率」を掛ける——だけです。この記事では計算のしくみと、月収別の目安を整理します。
計算のポイント3つ
- 賞与(ボーナス)は含まれません ― 含まれるのは毎月の給与(基本給+残業代+通勤手当等の各種手当)。年収で考えると印象より少なめになります
- 給付率は「賃金が低い人ほど高い」 ― 50〜80%(60〜64歳は45〜80%)の範囲で、低賃金の方ほど80%に近づく設計です
- 日額には年齢別の上限があります ― 上限額は毎年8月に見直されます。高収入だった方は上限で頭打ちになります
月収別の目安(30歳前後・一般的なケース)
| 離職前の月収(額面) | 賃金日額 | 基本手当日額の目安 | 月あたりの目安 |
|---|---|---|---|
| 18万円 | 6,000円 | 約4,800円(約80%) | 約14.4万円 |
| 24万円 | 8,000円 | 約5,300〜5,800円 | 約16〜17万円 |
| 30万円 | 10,000円 | 約6,000〜6,600円 | 約18〜20万円 |
| 40万円 | 約13,300円 | 約7,000円台(上限に接近) | 約21〜22万円 |
※給付率は賃金日額に応じて段階的に変わるため、あくまで概算の幅です。正確な金額は受給資格決定時にハローワークが算定します。
総額はいくらになる?
総額の目安=基本手当日額×所定給付日数。例えば日額5,500円で自己都合(勤続5年→90日)なら約50万円、会社都合で勤続12年・45歳(270日)なら約150万円。同じ給与でも、離職理由と勤続年数で総額は3倍変わることもあります。だからこそ、離職理由の区分の確認が重要なのです。
手取り感覚での注意点
失業手当は非課税(所得税・住民税がかからない)ので、額面がほぼそのまま使えます。一方で、国民健康保険・国民年金の保険料は別途発生します(免除・軽減制度の申請が可能)。「手当から何が引かれ、何を自分で払うのか」を把握して月の収支を組みましょう。
よくある質問
残業代が多かった月とそうでない月があります。
直近6ヶ月の平均で計算されるため、残業の多寡はならされます。逆に言えば、離職前6ヶ月の給与水準がそのまま日額に効いてきます。
育休や休職で給与が低い期間がありました。
賃金支払基礎日数が11日未満の月は計算から除外されるなどの調整があります。特殊な事情がある方は、給与明細を持ってハローワークで確認するのが確実です。
失業手当をもらうと扶養から外れますか?
基本手当日額が約3,612円以上だと、健康保険の扶養に入れない(外れる)扱いが一般的です(最終判断は保険者)。受給中だけ国民健康保険等に切り替えるケースが多くあります。
計算の元になる「賃金」の範囲を正確に
試算のずれの最大要因は、計算に入る賃金の範囲の誤解です。含まれるのは、基本給に加えて残業代・通勤手当・住宅手当など毎月決まって支払われる各種手当。含まれないのは、賞与(3ヶ月を超える期間ごとに支払われるもの)や、慶弔見舞金のような臨時の支払いです。「月収」を額面ベースで捉え、賞与は外す——この2点を押さえるだけで試算の精度は大きく上がります。また、計算対象は「離職前6ヶ月」の賃金なので、直近で残業が減っていた方は思ったより低く、繁忙で残業が多かった方は思ったより高く出ます。退職時期を選べる状況なら、直近6ヶ月の賃金水準が日額に直結することは、知っておいて損のない事実です(もっとも、体調を犠牲にしてまで調整すべきものではありません)。
給付率の仕組み:なぜ「50〜80%」と幅があるのか
給付率に幅があるのは、賃金が低かった人ほど手厚く支える再分配の設計だからです。賃金日額が低い層は80%に近く、高くなるにつれて段階的に50%へ下がっていきます(60〜64歳は45〜80%)。この結果、たとえば月収18万円の人は約80%で日額約4,800円、月収40万円の人は50%近辺+上限の影響で日額7,000円台と、賃金差ほど日額差は開きません。「手取りの感覚」で言えば、失業手当は非課税であることも相まって、低〜中所得層ほど在職時との落差が小さくなります。高所得だった方は落差が大きくなるため、その分、固定費の見直しと再就職手当(早期就職の一時金)の活用が家計防衛の柱になります。
総額シミュレーション3例(概算)
①26歳・月収22万円・勤続3年・自己都合:日額約5,100円×90日=約46万円
②38歳・月収32万円・勤続10年・会社都合:日額約6,600円×240日=約158万円
③52歳・月収45万円・勤続25年・会社都合:日額約7,000円台×330日=約230万円超
同じ「失業手当」でも、条件の組み合わせで総額は5倍違います。あなたの数字で一度計算してみる価値は、この差額が示しています。
通勤手当も入るなら、定期代の高い人は得ですか?
計算上は賃金に含まれるため日額を押し上げる方向に働きます。ただし給付率や上限額との兼ね合いで単純比例はしません。「含まれる」ことだけ覚えておけば試算には十分です。
歩合給・インセンティブはどうなりますか?
毎月の賃金として支払われていれば計算対象に含まれるのが原則です。変動が大きい方は、直近6ヶ月にどの月が入るかで日額が変わるため、給与明細6ヶ月分を持ってハローワークで確認するのが確実です。
休職して傷病手当金を受けていた期間は計算に影響しますか?
賃金支払基礎日数が11日未満の月は計算から除外されるため、直近に休職期間がある方は、それ以前の賃金月がさかのぼって採用されます。極端に不利にならないよう調整される仕組みですが、個別の計算は窓口で確認を。
受給額を左右する「自分でコントロールできる変数」
計算式のうち、賃金日額と給付率は過去の給与で決まるため動かせません。一方で、あなたの行動次第で結果が変わる変数が3つあります。第一に離職理由の区分。給付制限の有無だけでなく給付日数(=総額)が変わる最大の変数で、実態に合った区分の確認・異議申し立ては正当な権利です。第二に手続きの早さ。受給期間は離職から1年。手続きが遅れて日数を消化しきれなければ、計算上の総額は絵に描いた餅になります。第三に再就職のタイミング。3分の1以上残しての就職は再就職手当(残日数の60〜70%)になるため、「総受取額」で見ると早期就職が有利になる局面があります。式は変えられなくても、受け取り方は設計できる——これが金額の話の結論です。
雇用保険に加入していた期間が長いほど日額も上がりますか?
日額は直近6ヶ月の賃金で決まり、加入期間の長さは日額ではなく給付日数に効きます。「日額×日数」の掛け算のどちらに効く要素かを分けて考えると、制度の見通しが良くなります。
離職前に時短勤務で給与が下がっていました。
育児・介護等による時短で賃金が低下していた場合の算定には、不利にならないための特例的な取り扱いが設けられていることがあります。該当する方は必ず窓口で事情を伝えてください。
世帯で考える:配偶者の扶養と手当の関係
結婚している方は、世帯単位での設計も忘れずに。失業手当の受給中は、日額約3,612円以上だと配偶者の健康保険の扶養に入れない扱いが一般的なため、「受給が終わってから扶養に入る」「給付制限中だけ扶養に入り、受給開始で抜ける」といった時期の設計が発生します(手続きの可否・時期は配偶者側の保険者の判断)。また、あなたの収入が減る年は、配偶者側の税の配偶者控除・配偶者特別控除の対象になる可能性があります(失業手当は非課税のため、課税所得の計算では給与部分だけで判定)。世帯で見れば、社会保険と税の両面で取り戻せるものがある——受給額の計算とセットで、ここまで設計して初めて「手取りの最大化」です。
夫婦で同時期に退職します。注意点は?
お互いを扶養に入れられない期間が生じ得るため、国民健康保険・国民年金の保険料が世帯で二重にかかる想定を。免除・軽減制度の申請と、どちらかの再就職時期の設計が家計の鍵になります。
よくある計算の勘違いトップ3
最後に、相談の現場で繰り返し出会う勘違いを3つ潰しておきます。①「手取り月収×2/3くらいもらえる」——計算の起点は額面(総支給額)で、給付率は50〜80%。手取り基準で考えると過大な期待になります。②「90日=3ヶ月、つまり月給3ヶ月分」——日額×90日なので、月給換算では約2〜2.4ヶ月分程度になるのが普通です。③「振り込まれるまで無収入でも1ヶ月くらい」——自己都合(給付制限1ヶ月)の場合、手続き〜初回振込まで2ヶ月前後かかる想定が安全です。期待値を正しく置くことが、退職後の資金計画で一番大事な計算です。
計算が複雑で自信がありません。窓口で全部計算してもらえますか?
はい。受給資格の決定時にハローワークが正式に算定し、雇用保険受給資格者証に日額が明記されます。事前の試算はあくまで計画用、正式な数字は資格者証で、と二段構えで考えてください。
式は「6ヶ月の給与÷180×50〜80%」、差がつくのは区分と日数と受け取り方。この一行を持ち帰って、あなたの数字で試算してみてください。
▲ 月収別の日額イメージ。賃金が低いほど給付率が高く、差は圧縮されます(概算)
まとめ:式はシンプル、差がつくのは「離職理由と日数」
金額の計算式自体は「6ヶ月の給与÷180×50〜80%」とシンプルです。総額を左右するのはむしろ給付日数、つまり離職理由の区分と勤続年数。ご自身の給与と状況での試算は、LINEの無料診断(約1分)でお手伝いします。
※本記事の金額はすべて概算の目安です。実際の支給額はハローワークの算定によります。上限額等は毎年見直されるため、最新情報は公式情報をご確認ください。
