傷病手当金

パート・アルバイトでも傷病手当金はもらえる?対象になる条件と金額の目安【社労士監修】

「パートだから傷病手当金なんて関係ない」と思っていませんか。分かれ目は雇用形態の名前ではなく、勤務先の健康保険(社会保険)に加入しているかどうかです。加入しているパート・アルバイトの方なら、正社員とまったく同じ計算式で傷病手当金を受け取れます。

対象になる

勤務先の健康保険に加入している

  • 保険証(資格)が「協会けんぽ」や「◯◯健康保険組合」
  • 給与明細に「健康保険料」の控除がある
  • 正社員と同じ計算式で受給できる
対象外

勤務先の健康保険に入っていない

  • 国民健康保険に加入(原則、傷病手当金の制度なし)
  • 配偶者・親の扶養に入っている
  • → 有給休暇や他の制度の活用を検討

▲ まず自分の保険証(資格情報)を確認。「どこの健康保険か」がすべての出発点です

自分が社会保険に入っているか確認する方法

  • 保険証(またはマイナポータルの資格情報)の保険者名を見る ― 「全国健康保険協会(協会けんぽ)」や「◯◯健康保険組合」なら勤務先の健保です
  • 給与明細に「健康保険料」「厚生年金保険料」の控除があるか見る
  • 不明なら勤務先の担当者に「社会保険に加入していますか」と確認する

なお、パートの社会保険は適用拡大が進行中で、週20時間以上・月額賃金8.8万円以上などの条件を満たす方は、勤務先の規模に応じて加入対象が広がってきています。「昔は入っていなかったから今も違うはず」と思い込まず、現在の状態を確認してください。

目次

いくらもらえる?計算は正社員と同じ

計算式:支給開始日以前12ヶ月の標準報酬月額の平均 ÷ 30 × 2/3

例:標準報酬月額11万円のパートの方 → 日額約2,444円、月あたり約7.3万円
例:標準報酬月額15万円の方 → 日額約3,333円、月あたり約10万円

支給は連続3日の待期のあと4日目から、支給開始から通算で最長1年6ヶ月。金額は「フルタイムかどうか」ではなく、あなたの標準報酬月額で決まります。※加入12ヶ月未満の場合は別の計算ルールがあります。

パートならではの注意点

  1. シフトと「労務不能」の関係 ― 傷病手当金は「労務不能で働けなかった日」が対象です。もともとシフトが入っていない日も、労務不能の状態が続いていれば支給対象日に含まれます(暦日ベース)
  2. 退職後の継続給付の要件は同じ ― 継続1年以上の健康保険加入+退職日時点でも労務不能の状態が続いていること。加入して1年未満で退職すると継続給付は受けられないため、退職時期の設計が重要です
  3. 扶養との関係 ― 受給中に家族の扶養へ入ろうとする場合、傷病手当金も収入とみなされます(日額約3,612円以上は不可の目安)。パートの日額なら扶養に入れるケースも多いので、日額を出してから判断を

社会保険に入っていなかった場合の選択肢

勤務先の健保未加入(国保・扶養)の方は傷病手当金の対象外ですが、①有給休暇の取得(パートにも付与されます)、②加入条件を満たしているのに未加入なら遡及加入の相談、③働けない状態が続く場合の障害年金や自治体の支援制度、といった道があります。「対象外=何もない」ではありません。

よくある質問

週3日勤務です。待期の「連続3日」はどう数えますか?

待期は出勤予定に関係なく、労務不能の状態が連続した3日間で完成します(公休日や有給でも可)。シフト制でも考え方は同じです。

ダブルワークをしています。

傷病手当金は健康保険に加入している勤務先の報酬をもとに計算されます。もう一方の仕事で就労していると「労務不能」の判断に影響するため、両方の勤務状況を正確に伝えて確認してください。

夫の扶養内で働いています。何か使える制度は?

扶養内(健保未加入)の場合、傷病手当金は対象外です。有給休暇の活用や、症状が重く長引く場合の障害年金(国民年金の障害基礎年金)の検討、通院負担を下げる自立支援医療などが候補になります。

「社会保険に入っていたら損」という思い込みを解く

パートの社会保険加入は「手取りが減る」文脈で語られがちですが、傷病手当金の場面では話が逆転します。勤務先の健康保険に入っているからこそ、病気で働けないときに賃金の約3分の2×最長1年6ヶ月という所得保障が付いてくる——これは民間の就業不能保険なら相応の保険料がかかる保障内容です。さらに厚生年金に入っていれば、万一障害が残ったときの障害厚生年金(3級から。国民年金のみの障害基礎年金は2級から)という、より手厚い年金の対象にもなります。保険料は掛け捨ての損ではなく、こうした保障の対価です。適用拡大で加入するか迷っている方は、目先の手取りだけでなく「働けなくなったときに何が残るか」も天秤に載せてください。

申請の実務:パートの場合の書類の集め方

申請書類は正社員と同じ(本人記入+事業主証明+医師の意見書)ですが、パートならではの詰まりどころがあります。①事業主証明は本社経由のことが多い——店舗勤務の場合、店長ではなく本社の労務担当が書くため、時間がかかりがち。早めに「傷病手当金を申請したいので、手続きの窓口を教えてください」と確認を。②シフト表を保管しておく——「労務に服せなかった期間」の裏付けとして、直近数ヶ月のシフトの控えがあると話が早い。③賃金台帳の証明——初回申請では出勤簿・賃金台帳の写しを求められることがあります。会社が非協力的な場合は、保険者(協会けんぽ等)に事情を伝えれば会社へ確認が入ります。要は、正社員と同じ権利を、同じ手順で行使するだけ。「パートだから言い出しにくい」の遠慮は、この制度には不要です。

ケーススタディ:週4日勤務・標準報酬月額13万円の46歳パート
腰の手術で2ヶ月働けなくなり、傷病手当金を申請。日額約2,889円×暦日ベースで、月あたり約8.7万円を受給。有給を待期3日と序盤に充て、シフトのない日も労務不能が続いていたため支給対象に。復帰後は時短シフトから再開。「パートは休んだら無収入」と思い込んで退職を考えていたが、制度を知って雇用を守れたケースです。※金額は概算。

掛け持ちの片方だけ社会保険に入っています。どちらの分が出ますか?

傷病手当金は加入している勤務先の標準報酬月額をもとに計算されます。未加入のもう一方の収入は計算に入りませんが、そちらで就労していると労務不能の判断に影響するため、働けない状態なら両方休む前提で保険者に相談してください。

雇用保険にも入っています。傷病手当金と失業手当は同時にもらえますか?

同時には受け取れません。働けない間は傷病手当金、回復して求職できる状態になったら失業手当、と時期を分けて受け取るのが正しい順番です。退職が絡む場合は受給期間延長の申請も忘れずに。

退職を考えているパートの方への設計メモ

体調を理由に退職を考えているパートの方は、退職日の設計で結果が大きく変わります。ポイントは2つ。①継続給付には「継続1年以上」の健康保険加入が必要——加入から1年未満で退職すると退職後の給付は受けられないため、可能なら在職(休業)のまま1年の節目を越える設計に価値があります。②退職日時点でも労務不能の状態が続いていることが要件——退職日に労務した場合は継続給付を受給できません。この2つを満たせない場合でも、在職中の期間分の受給や、雇用保険側(失業手当・受給期間延長)での設計は可能です。どのルートが取れるかは加入期間と体調次第なので、退職を決める前の相談が一番効果的です。

夫の扶養に戻るタイミングはいつがいいですか?

傷病手当金の受給中は日額(約3,612円以上)によって扶養に入れないことがあります。受給が終わってから、または日額が基準未満であることを確認してから、夫側の保険者に認定を申請する流れが安全です。

制度を知らずに損をしないためのチェックリスト

  • 保険証(資格情報)の保険者名を確認した(勤務先の健保か、国保・扶養か)
  • 給与明細で健康保険料・厚生年金保険料の控除を確認した
  • 待期3日は連続していれば公休・有給でも完成すると理解した
  • シフトのない日も労務不能なら支給対象になり得ると理解した
  • 退職を考える場合は「継続1年」と「退職日時点の労務不能」の2要件を確認した

店長に「パートに傷病手当金はない」と言われました。

誤りです。健康保険の被保険者であれば雇用形態を問わず対象です。現場の思い込みで止まっているだけのことが多いので、本社の労務担当か、直接保険者(協会けんぽ等)に確認してください。

産休・育休の手当とはどう違いますか?

出産手当金・育児休業給付は妊娠出産育児に伴う休業への給付、傷病手当金は病気やケガによる労務不能への給付です。時期が重なる場合は出産手当金が優先されるなど調整があります。妊娠関連の体調不良はどちらの枠かで扱いが変わるため、保険者に確認を。

パートという働き方は、制度の外側ではありません。保険証を確認したその瞬間から、あなたはこの制度の当事者です。

社会保険の加入をさかのぼって認めてもらえますか?

加入条件を満たして働いていたのに未加入だった場合、事実確認のうえ遡及して加入の扱いとなることがあります。給与明細・シフト表を揃え、年金事務所に相談してください。

「パートだから」で諦めていた給付が、保険証1枚の確認で現実になります。まずは今夜、財布の中の資格情報から。

保険証が手元になくマイナ保険証だけです。どこを見れば?

マイナポータルにログインすると、現在の資格情報(保険者名)を確認できます。勤務先の健康保険名になっていれば対象、市区町村の国民健康保険なら対象外、という見分け方は同じです。

標準報酬月額 13万円週4日パートの例
÷
30
×
2/3
=
日額 約2,889円月あたり約8.7万円

▲ パートでも計算式は正社員と同一。あなたの標準報酬月額を当てはめるだけです

まとめ:名札ではなく「保険証」で決まる

傷病手当金の対象かどうかは、パート・アルバイトという呼び名ではなく、勤務先の健康保険に加入しているかで決まります。加入していれば計算も要件も正社員と同じ。まずは保険証と給与明細の確認から。あなたの加入状況と日額の目安、LINEの無料診断(約1分)でお調べします。

※本記事は一般的な制度解説であり、受給を保証するものではありません。適用拡大の対象条件は段階的に変わるため、最新情報は公式情報・勤務先にご確認ください。

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