傷病手当金を検討し始めた方が最初に知りたいのは、結局「自分はいくらもらえるのか」ではないでしょうか。計算式そのものはシンプルですが、もとになる「標準報酬月額」という言葉でつまずく方がとても多いのです。この記事では、計算のしくみを分解し、月収別の早見表で目安がすぐ分かるようにしました。
結論:計算式は「標準報酬月額の平均 ÷ 30 × 2/3」
1日あたりの支給額 = 支給開始日以前12ヶ月間の標準報酬月額の平均 ÷ 30 × 3分の2
ざっくり言えば「これまでの月給のおよそ3分の2が、日割りで支給される」制度です。支給されるのは連続3日の待期のあと、4日目以降の労務不能の日について。土日を含む暦日でカウントされます。
「標準報酬月額」とは?
標準報酬月額とは、社会保険料を計算するために月給を区切りのよい等級に当てはめたものです。ポイントは次の3つ。
- 基本給だけではありません ― 残業代・通勤手当・各種手当を含んだ報酬で決まります。「基本給×2/3」で計算すると実際より少なく見積もってしまいます
- 賞与(ボーナス)は含まれません ― 年収ベースで考えると、実際の支給額は「年収の2/3」より少なくなります
- ご自身の標準報酬月額は確認できます ― 毎年届く「標準報酬決定通知書」、給与明細の健康保険料から逆算、または勤務先・保険者への確認で分かります
月収別・支給額の早見表(目安)
| 標準報酬月額 | 日額(2/3) | 月あたり(30日換算) |
|---|---|---|
| 20万円 | 約4,444円 | 約13.3万円 |
| 26万円 | 約5,778円 | 約17.3万円 |
| 30万円 | 約6,667円 | 約20.0万円 |
| 34万円 | 約7,556円 | 約22.7万円 |
| 41万円 | 約9,111円 | 約27.3万円 |
※支給開始日以前12ヶ月の平均で計算するため、直近で昇給・降給があった場合は上表とずれます。あくまで目安としてご覧ください。
手取り感覚では「3分の2」より差が縮まる理由
▲ 額面は2/3でも、非課税のため手取りベースの差はこの図より縮まります
傷病手当金は非課税です(所得税・住民税がかかりません)。給与は税金や社会保険料が引かれて手取りになるのに対し、傷病手当金は額面がほぼそのまま受け取れます。一方で、在職中は健康保険・厚生年金の保険料の本人負担分が引き続き発生する(会社へ支払う)ため、その分は支出として見込んでおく必要があります。「額面の2/3」という数字の印象より、手取りベースの実感は近くなるケースが多い、と覚えておいてください。
加入12ヶ月未満の場合はどう計算する?
支給開始日以前の加入期間が12ヶ月に満たない場合は、①加入期間中の標準報酬月額の平均、②加入する保険者の全被保険者の標準報酬月額の平均、のいずれか低い方で計算されます。入社して間もない方は、実際の月給より低めの計算になる可能性がある点に注意してください。
減額・調整されるケース
- 給与が一部支払われている ― 給与が傷病手当金の額より少ない場合、差額のみ支給されます
- 障害厚生年金などを受けられる ― 同一の傷病による障害厚生年金等との間で調整(減額・不支給)があります
- 出産手当金を受けられる ― 出産手当金が優先され、傷病手当金は原則その間支給されません(差額支給の場合あり)
- 労災の対象になる傷病 ― 業務・通勤が原因なら労災保険の対象で、傷病手当金とは二重に受け取れません
よくある質問
支給期間は何ヶ月分ですか?
支給開始日から通算で最長1年6ヶ月です。2022年の改正で通算化され、途中で復職して働いた期間はカウントされません。上の早見表の月額×最長18ヶ月分が、受け取り得る総額の上限イメージです。
振り込みはいつですか?
申請(一般的に1ヶ月ごと)から審査を経て、不備がなければ数週間程度で振り込まれるのが目安です。初回は給与台帳等の確認で時間がかかることがあります。生活費は1〜2ヶ月分の余裕を見ておくと安心です。
退職後も同じ金額がもらえますか?
継続給付の要件(継続1年以上の加入・退職日時点でも労務不能の状態が続いていること等)を満たしていれば、計算方法は変わらず、元の保険者から支給されます。
標準報酬月額を自分で確かめる3つの方法
計算のすべての起点になる標準報酬月額は、次の方法で確認できます。第一に、毎年届く「標準報酬決定通知書」(9月頃に会社経由で通知されることが多い書類)を見る方法。第二に、給与明細の健康保険料から逆算する方法。健康保険料(本人負担分)÷保険料率(都道府県・組合ごと)×2で標準報酬月額が求まります。計算が面倒なら、保険料額表(協会けんぽのサイト等)で自分の保険料額の行を探せば一発です。第三に、勤務先の担当部署か保険者に直接聞く方法。休職や退職を控えた確認なら、率直に「傷病手当金の試算をしたいので標準報酬月額を教えてください」で問題ありません。
注意したいのは、4〜6月の残業が多いと9月からの標準報酬月額が上がる(定時決定)など、時期によって等級が変わっている可能性があることです。傷病手当金は「支給開始日以前12ヶ月の平均」を使うため、直近1年の等級の推移まで見ておくと、試算の精度が上がります。
受給中の家計設計:収入と支出の変化を一枚で
傷病手当金の受給が始まると、家計は「収入が3分の2になる」だけでなく、支出側も変わります。押さえるべき変化は4つ。①社会保険料の本人負担は在職中なら継続(給与天引きができないため会社へ振込)。②住民税は前年所得ベースで続く(普通徴収への切り替えや減免相談は自治体へ)。③所得税は傷病手当金にはかからない(非課税)ため、年末調整・確定申告で在職中の源泉徴収分が還付されることが多い。④医療費は毎月かかるが、自立支援医療(精神通院)で1割負担化、高額になる月は高額療養費制度の対象になり得る。収入減ばかりに目が行きますが、支出側の制度を並行して使うことで、実際の家計はかなり守れます。
試算例:標準報酬月額30万円・一人暮らしの場合
収入:傷病手当金 約20万円/月(非課税)。支出の変化:社会保険料 約4.3万円(継続・会社へ振込)、住民税 約1.5万円(前年所得による)、通院費 約1,500円(自立支援医療適用後)。差引で自由に使えるのは約14万円前後——家賃によっては貯金の取り崩しが必要なラインです。受給開始前にこの一枚を作っておくと、「いつまで療養できるか」が感覚ではなく数字で見えるようになります。※すべて概算です。
傷病手当金に社会保険料はかかりますか?
傷病手当金そのものから保険料が天引きされることはありません。ただし在職中は被保険者資格が続くため、保険料の支払い義務自体は継続します(支払方法は会社と調整)。退職後は切り替えた先(国保・任意継続等)の保険料を支払います。
確定申告は必要ですか?
傷病手当金は非課税のため申告対象の所得にはなりません。ただし、年の途中まで給与収入があった方は、確定申告(または年末調整)で源泉徴収された所得税が還付されるケースが多いので、源泉徴収票を保管して申告をおすすめします。
日額に上限はありますか?
標準報酬月額には上限等級があるため、結果として日額にも事実上の上限があります。高収入だった方は「月収×2/3」より少なくなることがあります。正確な額は保険者の決定によります。
「思ったより少ない」を防ぐ:試算のときの注意点
試算と実際の支給額がずれる典型パターンは3つあります。第一に、額面月収と標準報酬月額の混同。標準報酬月額は等級制のため、実際の月収とぴったり一致しません(例:月収29万円→標準報酬月額30万円の等級、など)。第二に、直近の昇給を織り込んでしまうこと。計算は支給開始日以前12ヶ月の平均なので、最近昇給した方は「今の月収×2/3」より低めに出ます。第三に、支給されない日の見落とし。給与(有給)が出た日、待期の3日間、労務可能と判断された日は対象外です。試算はあくまで「満額出た場合の上限イメージ」として持ち、実際の初回振込で答え合わせをする——この構え方が、家計計画を狂わせないコツです。
賞与が出る月は傷病手当金が減りますか?
賞与は報酬に応じた調整の対象とは扱いが異なり、傷病手当金が賞与の支給を理由に減額されることは基本的にありません(標準賞与額は傷病手当金の計算にも含まれません)。詳細は保険者にご確認ください。
複数の病気で通院しています。計算は変わりますか?
金額の計算式自体は同じですが、支給期間(通算1年6ヶ月)は同一傷病ごとに数えるため、どの傷病での請求かによって残期間の管理が変わります。診断名が複数ある方は、保険者に期間の整理を確認しておくと安心です。
試算した金額で生活が成り立ちそうにありません。
傷病手当金だけで足りない場合、支出側の制度(自立支援医療・高額療養費・国民年金の免除・住民税の減免相談)と、状況によっては住居確保給付金など自治体の支援を重ねるのが定石です。「収入を増やす」以外の選択肢を組み合わせて、療養を続けられる形を作りましょう。
まとめ:まず自分の標準報酬月額を確認しよう
傷病手当金の金額は「標準報酬月額の平均÷30×2/3」。計算の起点になる標準報酬月額さえ分かれば、上の早見表でおおよその月額が見えてきます。そのうえで、加入期間・給与の支払い状況・他の給付との調整といった個別事情で最終的な金額は変わります。「自分の場合はいくら・いつから・いつまで」を具体的に知りたい方は、LINEの無料診断(約1分)をご利用ください。
※本記事は一般的な制度解説であり、金額はすべて目安です。実際の支給額は加入先の保険者の決定によります。最新情報は協会けんぽ・ご加入の健康保険組合の公式情報をご確認ください。
