傷病手当金

休職からそのまま退職する流れ|傷病手当金はどうなる?お金と手続きのタイムライン【社労士監修】

「もう働き続けられない。でも、いきなり退職するのは不安」――そんなとき、実務上もっとも安全とされるのが「まず休職し、療養しながら態勢を整え、そのうえで退職する」という進め方です。この記事では、休職からそのまま退職する場合の全体の流れを、お金(傷病手当金・失業手当)の動きと一緒にタイムラインで解説します。

全体の流れ:休職→退職→給付のタイムライン

在職・休職中受診→待期3日→
傷病手当金 受給開始
退職退職日時点でも
労務不能が継続(要件)
退職後の療養期間継続給付
支給開始から通算 最長1年6ヶ月
回復後失業手当へ切替
(受給期間延長を申請済みに)

▲ 休職→退職→給付の全体像。2つの給付をバトンのように順番に受け取ります

  1. 受診 ― 心療内科・内科などで診察を受け、必要に応じて診断書をもらいます。すべてはここから始まります
  2. 休職の申請 ― 就業規則の休職制度を確認し、診断書を添えて会社に申請。休職期間の上限(勤続年数で変わることが多い)も確認しておきます
  3. 傷病手当金の受給開始 ― 連続3日の待期ののち、4日目以降の労務不能の日について、給与の約3分の2(標準報酬月額の平均÷30×2/3)が支給されます
  4. 療養しながら今後を判断 ― 復職するか退職するか、焦らず決められるのが休職を挟む最大のメリットです
  5. 退職 ― 退職を選ぶ場合、継続給付の要件(後述)を満たした形で退職日を迎えます
  6. 退職後も傷病手当金を継続受給 ― 支給開始から通算で最長1年6ヶ月
  7. 回復後、失業手当へ切り替え ― あらかじめ受給期間延長(最長4年)を申請しておき、働ける状態になったら失業手当の手続きへ
目次

なぜ「休職を挟む」のが安全なのか

  • 待期と証明がスムーズ ― 在職中なら連続3日の待期の完成や、医師による労務不能の証明が整えやすい
  • 加入期間の要件を満たしやすい ― 退職後の継続給付には「継続して1年以上」の健康保険加入が必要。入社1年未満の方は、休職で在籍期間を延ばす意味が大きい
  • 判断を焦らなくていい ― 傷病手当金で生活費を確保しながら、復職か退職かを体調と相談して決められる

退職後も受給を続けるための要件(最重要)

退職後の継続給付を受けるための要件は、①退職日までに継続して1年以上健康保険の被保険者であること、②退職日の時点でも引き続き労務不能の状態であること、の2つです。退職日に出勤(労務)した場合は労務可能な状態になったものと扱われ、一度労務可能な状態になると退職後の継続給付は受給できません。退職日の取り扱い(欠勤・有給など)に迷う場合は、事前に加入先の保険者や専門家に確認してください。

休職中に知っておきたいお金の話

社会保険料の本人負担分は続きます

休職中も健康保険・厚生年金の被保険者資格は続くため、保険料の本人負担分は発生し続けます。給与がゼロだと天引きできないため、会社に振り込む形になるのが一般的です。傷病手当金から差し引かれるわけではないので、支給額から保険料分を支払う前提で家計を組みましょう。

住民税も別途かかります

住民税は前年の所得に対して課税されるため、休職して収入が減っても、前年分の納付は続きます。普通徴収への切り替えや納付方法は会社・自治体に確認を。

傷病手当金は非課税です

傷病手当金には所得税・住民税がかかりません。「給与の3分の2」という額面以上に、手取りベースでは差が縮まるケースが多いです。

「休職満了」による退職の注意点

就業規則の休職期間が満了しても復職できない場合、「休職期間満了による退職(自然退職)」となる会社が多くあります。この場合も、要件を満たしていれば傷病手当金の継続給付は受けられますし、失業手当側では病気による離職として特定理由離職者と判断される可能性があります。満了日がいつなのかを早めに把握し、その日までに継続給付の要件と受給期間延長の段取りを整えておくことが大切です。

よくある質問

休職を言い出しにくいのですが、診断書があれば通りますか?

医師の診断書があれば、会社は療養の必要性を前提に対応するのが通常です。休職制度の有無・内容は就業規則で確認できます。伝えること自体がつらい場合は、書面やメールでの申請も可能です。

休職中に退職を切り出すタイミングは?

法的な決まりはありませんが、退職日の1ヶ月前を目安に伝える方が手続きは円滑です。体調が最優先なので、電話やメールでの連絡でも問題ありません。

休職中の転職活動はできますか?

傷病手当金は「労務不能」が前提の給付です。本格的な就職活動や就労を始めると労務不能とはいえなくなり、支給に影響します。回復して働ける状態になってから、失業手当に切り替えて求職活動を行うのが正しい順番です。

休職を切り出す実務:就業規則の読み方と診断書

休職は法律の制度ではなく会社ごとの制度です。だからこそ最初の一歩は就業規則の休職規定を読むこと。確認すべきは4点あります。①休職できる期間の上限(勤続年数で変わる会社が多い。例:勤続3年未満は3ヶ月、など)、②休職の要件(「欠勤が連続◯日続いたとき」等の発動条件)、③休職中の賃金・社会保険料の取り扱い、④復職の手続きと、復職できない場合の扱い(自然退職か解雇か)。この4点をメモしてから、診断書を添えて申請すれば、会社側も制度に沿って処理するだけになります。就業規則が手元にない場合、会社には備え付け・周知の義務があるので、人事に開示を求めて構いません。

診断書の文言は医師の判断ですが、「◯ヶ月間の休養(自宅療養)を要する」という形式が一般的です。期間が短めに出ても、経過に応じて延長の診断書を出してもらえるので、最初から長期を求める必要はありません。

休職中の過ごし方と「復職か退職か」の決め方

休職に入った直後は、仕事から離れた解放感と、キャリアが止まる焦りが交互に来ます。前半は治療と休養に専念し、判断は主治医と相談しながら後半に——が原則です。決め方の軸はシンプルで、「復職した自分が、同じ環境で健康を保てるイメージが湧くか」。環境(業務量・人間関係・体質に合わない働き方)が原因なら、環境が変わらない限り再発リスクは残ります。異動などで環境を変えられるなら復職、変えられないなら退職と次の準備、という整理です。どちらを選んでも、休職中に受給を始めた傷病手当金は、復職すれば一時停止(通算の残りは温存)、退職なら要件を満たせば継続給付、と制度側は両対応になっています。

ケーススタディ:勤続2年・月収26万円の30歳が休職6ヶ月→退職
休職中の傷病手当金は日額約5,778円(月約17.3万円)。休職中も社会保険料の本人負担(月約3.7万円前後)を会社に振込み、実質手取りは月約13.5万円。6ヶ月後、環境が変わる見込みがなく退職を選択。要件を満たして退職し継続給付へ移行、あわせて受給期間延長を申請。1年後に回復して失業手当(特定理由離職者・90日)に接続。休職を挟んだことで、判断の時間と加入期間の両方を確保できた典型例です。※金額は概算。

休職中にボーナスは出ますか?

賞与は就業規則(賞与規程)の定めによります。査定期間の勤務実績に応じて減額・不支給となる会社が多いですが、支給日在籍要件を満たすかどうかも含め、規程の確認が確実です。

休職と有給消化、どちらを先に使うべきですか?

一般的には、待期3日に有給を充てられること、有給中は給与満額であることから、有給→欠勤(傷病手当金)の順が多いです。ただし退職日や残日数によって最適解が変わるため、全体の設計とセットで決めるのがおすすめです。

休職したら出世に響きますか?もう戻るつもりはないのですが。

退職を視野に入れているなら、評価への影響を心配する必要はもうありません。休職はあなたの権利的な制度の活用であり、残りの在籍期間を回復と準備に使うことに、ためらいは不要です。

会社とのやり取りを最小化する休職の進め方

体調を崩しているときに一番消耗するのは、会社との細かいやり取りです。最小化のコツは、連絡の頻度とチャネルを最初に決めてしまうこと。休職に入る際、「経過のご報告は月1回、メールでお送りします。お電話は難しい状態です」と一文添えておけば、上司からの不定期な電話に怯える日々を避けられます。傷病手当金の申請書の事業主証明も、「毎月◯日頃に郵送しますので、ご記入のうえ返送をお願いします」と型を作れば、以後は事務作業として回ります。会社は敵ではありませんが、療養中のあなたが気を遣い続ける相手でもありません。接点を「月1回の定型連絡」に固定することが、回復への近道です。

休職中に会社から「様子を見に行く」と言われました。

訪問を受ける義務はありません。「療養に専念するよう医師から言われているため、ご報告はメールでさせてください」と断って差し支えありません。負担に感じる接触は、遠慮なく型に押し戻しましょう。

休職期間の上限まであと1ヶ月です。何から手を付けるべきですか?

優先順位は、①退職日(満了日)時点で継続給付の要件を満たすかの確認、②ハローワークへの受給期間延長の準備、③健康保険の切り替え先の保険料試算、の順です。満了日は動かせないため、逆算での段取りが全てになります。

就業規則を確認休職の期間・要件・賃金
診断書を取得「◯ヶ月の休養を要する」
休職を申請診断書を添えて
メールでも可
傷病手当金を申請毎月の定型サイクルへ

▲ 休職に入るまでの実務フロー。起点は就業規則と診断書の2つです

まとめ:休職は「逃げ」ではなく、設計された安全ルート

受診→休職→傷病手当金→(要件を満たして)退職→継続給付→回復後に失業手当。この王道ルートは、生活費を確保しながら心身を立て直すために制度が用意している道筋です。ただし、休職期間の上限、継続給付の要件、受給期間延長など、押さえるべきポイントが多いのも事実。あなたの勤続年数・体調・会社の制度をふまえた最適な段取りを、LINEの無料相談で一緒に確認しませんか。

※本記事は一般的な制度解説であり、受給を保証するものではありません。休職制度の内容は会社ごとに異なります。最新情報は厚生労働省・ご加入の健康保険の公式情報をご確認ください。つらい状態が続くときは、まず医療機関にご相談ください。

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